警察の「捜査」は何のために行われるのか(判例有り)
1 警察の捜査は「被害者の被害感情の回復のため」では決してない
被害者としては,捜査機関が捜査や起訴をしてくれない場合に不満を持ちます。
法的な責任追及の手段としては国家賠償請求があります。
実際に国家賠償請求の訴訟を提起したケースがありました。
最高裁は,捜査は公益目的であることを指摘します。
これを前提として,被害者に報いることになるのは結果論(反射的利益)であり,結果的に被害者が不満を持つとしても法的には保護しないと指摘しました。
結論としては,国家賠償請求を認めないという判断です。
ただし,判例は捜査する義務の有無を判断したわけではありません。
<国家賠償請求における反射的利益論(平成2年判例の判決文)>
(1) 捜査・告訴の法的性格
犯罪の捜査及び検察官による公訴権の行使は,国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって,犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではない
告訴は,捜査機関に犯罪捜査の端緒を与え,検察官の職権発動を促すものにすぎない
(2) 反射的利益論
被害者又は告訴人が捜査又は公訴提起によって受ける利益は,公益上の見地に立って行われる捜査又は公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎない
法律上保護された利益ではない
(3) 国家賠償請求との関係(否定)
したがって,被害者ないし告訴人は,捜査機関による捜査が適正を欠くこと又は検察官の不起訴処分の違法を理由として,国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない
※最高裁平成2年2月20日
2 警察に「望むような捜査」を行ってもらうために
前記のように,平成2年判例は,反射的利益論を明確に示しました。
つまり、被害申告や告訴告発を提出したからと言って「被害者が望むような捜査」は「行う義務がない」という事にあたります。
それを「不満に思った」からといって「国家賠償請求」を起こしたとしても「上記判例」により棄却されるのは自明の理です。
※もちろん「作為不作為に関わらず不履行がある場合」は除かれます
では、どの様にすれば「望むような捜査を行ってもらえるか」
それは、ひとえに「疑わしきは罰せず」の「疑わしき」の主体をよく理解することに限ります
つまり、「司法機関が求める証拠」を携え、その行為が「個人的にだけでなく」放置することで「公共の安全と秩序の維持に支障がある」と認められる状態に置くことが肝要ということでございます。
誰もが「裁判所の発する令状によられなければその身体を拘束され~」と定められている以上、「どの様な理由があれど」ただの「個人的な感情」では国の機関である警察が動くわけではありません
刑法に定められた「刑罰法規」に関しましても、それぞれに「個別の構成要件」がございます
当然に「日本という国が定めた法律」である「民法」も同様のため「法的な証拠の形」が決まっているということになります
つまりは「司法が求める証拠」があれば足り、「自己満足」の素人目線の証拠では「不足」するということになります
つまりは「1にも2にも証拠」さえあれば「被害者が被害者たり得て」「求め得る救済」を受けることができるということでございます