秘密の暴露について=供述の任意性の確保=
元刑事の事件簿として、最初の投稿は「取り調べの「と」」である「任意性の確保」に関する事をお話にします。
これは、「刑事事件」に限らず、「夫婦の不倫」に関する「聴取」つまり「事実の聞き取り」にも大きく関わって参りますので、参考として記載します。
そもそもの話、「日本国憲法」つまり、「日本で一番強い法律」が「憲法第38条」において「強制・拷問・脅迫による自白の証拠能力は無い」と明らかに規定しています。
他にも、「不当に長く抑留・拘禁した後の自白」も証拠能力を否定されます。
刑事事件だけに留めてお話しすると、昭和の時代に実しやかに囁かれる「取り調べ室で叩いて供述させた」「拳銃で脅して供述させた」「うたえば(認めれば)帰れるぞと言われて供述した」などがあります。
もちろん、現代は「取り調べの可視化」が行われていますので、表立ってこのような事が行われる事はありませんが、「取り調べ室」という「特殊な密室」において交わされる「取り調べ官との一対一の言葉」は、相手にとって圧力を感じるものである可能性はあります。
ですので、実際に「取り調べした刑事から脅された」「取引を不当に持ちかけられた」つまり「だからやってもいない事を認めた」と公判で話し出す事があります。
こういった事は、「民事に転じて」も十分にあり得る事かと思います。
実際に、判例(過去の実際の裁判結果)では、たとえば「夫の不倫を妻が知り、その不倫相手を呼び出して二度と会わないように同意書を書かせた」という事について、「書かせた後も不倫を続けていたため多額の慰謝料を請求」したという事案が裁判で争われたケースがございます。
これについては、結論、「そもそも同意書の任意性が無いため同意書は無効」という判決が下され、「証拠がない原告は敗訴した」という判例がございます。
これは、「不倫相手の身に立って考えた場合」に、「自由意志で書いたものとは到底認められない」というのが趣旨として語られています。
「およそ不倫相手の配偶者が面前で話している内容について、詳細に聞き取り、ましてや正常な判断をするということに至る可能性は非常に低いと言わざるを得ない」と判断されたということです。
つまりは、「相手が自由に考えれる」「自由に席を離れられる」「自由に帰れる」ような環境下において、裁判のように「相手が自己に不利益な事を言わなくても良い環境」を用意した上でなければ、さらに言えば「その環境を用意した事を証明しなければ」、その際に「話させた事」「書かせた物」は否定される可能性が非常に高いという事になります。
つまりは、「証拠がない状態」で、「思いつき」「自分がスマホなどを覗き見た内容」等から推察して相手を追い詰める、または、供述させる行為には「リスク」しかないという事です。
刑事事件における経験から、「不倫や浮気」などでよくあるケースの参考になればと、お伝えいたしました。